廃止になるはずだった鉄道に乗って

釧網本線は東釧路と網走を結ぶ166.2キロの路線です。細岡駅周辺の釧路湿原や知床斜里〜網走のオホーツク海、流氷など観光資源の多い路線ですが、実は一時期廃止が取り沙汰されていました。釧網本線の輸送密度が、国鉄再建法で第二次特定地方交通線に当たったからです。しかし、特定地方交通線の除外条件として「1人あたりの平均乗車距離が30キロを超える」というものがあり、同線はこれを満たしていたため廃止を免れました。
30年近く月日が流れ、いま一度利用者の少ない路線として名を連ねていますが、実際どれほど利用されているのでしょうか?乗車してきました。

朝の釧路駅は夜とまた違った良さがあります。
動輪の下のレールにはこのような文字が。お好きな方は是非。

乗車するのは8:57発の快速しれとこ。釧網本線は通しの列車がかなり少なく、これを逃すと14時台まで列車はありません。それゆえ、快速とは言ってもやたらめったら通過させるわけにもいかず、当列車の通過駅は釧路湿原、細岡、南弟子屈、南斜里、原生花園のみ。しかも、釧路湿原と原生花園は夏の時期には停車するので、実質的な通過駅は3駅だけです。もうこれ普通列車でいいのでは…?

全日本名前詐欺快速選手権(などと←ノサップはそうでもないか

使用されるのはキハ54。単行なのが少し寂しいところ…。

車内に入ると、観光路線にふさわしいグレードの高そうな座席が出迎えてくれました。どうやら、この座席は元々キハ183という特急型気動車に設置されていたものらしいです。当時と違って座席は回転しませんが…。

↑座席は集団見合い式に固定されているので、ボックス状のシートは1両に二ヶ所しか存在しません。これだったらリクライニングができなくても転換クロスシートの方が嬉しかったかな…と思ってしまいます。

大楽毛からの普通列車が来て発車。そんなに乗り継ぎ需要があるように思えませんが…。
車内はガラガラで、廃止論議が浮上するのも仕方ないかな、と言えるレベルです。
次の東釧路では3人ほど乗車。地方の普通列車だと後ろ乗り前降りというところが多いですが、北海道の場合は前乗り前降り方式。いつもよりさらに乗降数がわかりやすいですが、そのままデッキに残る人もいるので別の難しさがあります。降りるのかと思ったらただトイレに行っていただけ、とかね。

塘路で1人乗車茅沼で1人降車、と湿原区間では乗降は少なめ。湿原は白樺?の木が立ち並んでいて非常に綺麗でした。

と、ここで自分的一大イベント。3/4に廃止されたばかりの五十石駅跡を通過するのです。跡地がどうなっているのか気になるところでしたが…

完☆全☆体

さすがに駅名標は撤去されていましたが、ホームと駅舎は元のまま。知らない人だと、ただ駅を通過しているだけに見えてしまうかもしれません。

ところで、乗車数がイマイチよくわかっていなかったので、ここで数えてみました。
結果は18人。多いとは言えませんが、ぼちぼちといった感じです。

標茶はさすがに大きな町だけあって有人駅。10人ほどが一気に降車しました
釧路〜標茶間は48.1キロで釧網本線の平均乗車キロを釣り上げていそうです。1人あたり1070円得ることができるので(定期利用者は多いでしょうが…)、JRにとっても嬉しい話でしょう。

それにしても、釧網本線は各駅ごとに結構集落があるように感じます。磯分内などどれほどのものか、と思っていましたが、何かの工場もありましたし、地味な駅でも侮れないものです。

弟子屈町の中心である摩周では2人下車,1人乗車。釧路から1時間15分ほどなのでそこそこの利用が見込めるかと思ったのですが…。あるとしたら運賃の問題ですかね…?

川湯温泉で1人乗車し、車内は7人に。峠越えの人数としてはナシではないかと思います。
やや長めの隧道を一本抜けてオホーツク海側へ到達!峠としては低めの部類に入ると思いますが、存分に山越え感を味わいました。
オホーツク海側最初の駅の緑では1人下車。まあこんなものですかね。

札弦では1人乗車清里町では1人下車,8人乗車。あまり意識していなかったところでの大量乗車には勉強不足を実感させられます。
南斜里を通過して中斜里に到着。ここでも1人乗車しました
次の知床斜里はこのあたりの中心なのか、清里町乗車組を中心に5人下車。と、知床帰りと思われる観光客集団が25人ほど一気に乗車。一気に車内が賑やかになりました。この分だと、釧網本線を廃止するにしても網走〜知床斜里は残さないとマズそうです。網走〜知床斜里はもともと網走本線の一部で、網走〜北見と一体のようなものですし。
浜小清水2人乗車藻琴2人下車と途中駅の利用もそこそこ。

桂台では7人下車。時刻表上では地味な駅ですが、実は網走市街に近く地元客の利用が多いようです。

桂台駅山側の様子(乗客が多く家の多い海側は写真を撮れませんでした…)

桂台を出ると市街地のへりを通って網走に到着。30人ほど下車していきました

乗車している限り、利用者は多くないが廃止するほどではない、と感じます。とくに、網走〜知床斜里や釧路〜標茶は利用が多いので場合によっては増発も検討してもいいかもしれません。問題は摩周〜川湯温泉〜緑〜清里町あたりの山越え区間になりますが、ネットワークから考えれば廃止は不適ですし、すぐさま廃止せよ、というレベルではないように思います。結局のところ、施設改修を行ったうえで現状維持がベストではないでしょうか?網走〜知床斜里の高速化が行われれば観光利用でプラスにはなると思いますが。
一度廃止されかけた路線ですが、未来は意外と暗くないのかなと思いました。鉄道事業は本当に先が見えませんね(札沼線末端の廃止に反対しているわけでは決してありません)。

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