乗り遅れた船

熊本と島原を結ぶ熊本フェリーではSSTH70という全国でもここだけの特殊な船を運航しています。それがSUNQパスで利用可能というのですから、乗りに行くしかありません。

島鉄バスターミナルそばの中華屋でお昼を食べ、路線バスで島原港へ。時刻表上では出航の5分ほど前に港のバス停に着くことになっており、ちょうどこれが接続便でしょう。事実、雲仙からのバスも同時刻にやってくることになっていますし。

ほぼ定刻どおりにバスは島原港へ到着。1枚だけ写真を撮ってきっぷ売り場に向かうと…
「あー5分切っちゃったのでもう発券できませんね…。」
呆然としました。なにしろ公式サイトに締切時刻など記載されていなかったのです。長崎で出航1分前に乗船券を買って乗り込んだという経験から慢心していたといえばそうなのですが、それにしても現地を訪れて初めて締切時刻を告げられるのは酷に思います(おそらく締切時刻を記載してしまうとその前後に乗客が集中して大変だということなのでしょうが…)。

まじかぁ…とだけ呟き続けながら外に出てみると、驚いたことにお目当の船が停泊している岸壁まで歩いていくことができました。虚しさを募らせつつお見送りします。

一風変わった姿ですが詳細は後ほど…。

そのまま岸壁に立ち尽くしていると“レインボーかもめ”がやってきました。いっそ乗ってしまおうかとも思いましたが、こちらは九商フェリーという別の会社ゆえSUNQパスは利用できませんし、やはりSSTH70に乗ってみたいということで次の便を待つことに。

ランプが上下して2層に分かれた車両甲板から続々とクルマが飛び出してきます。

乗船券の発売は出航45分前から。今度こそ乗り遅れないようすぐさま窓口へ。

SUNQパスを提示するとペラペラの乗船券を渡されました。

いよいよお目当ての船が帰ってきました。熊本フェリーの“オーシャンアロー”です。双胴のフェリーというだけでも珍しいのに、この船は石川島播磨重工業と東大がタッグを組んで開発したSSTH70とよばれるここだけの型式。各船体を細長くして造波抵抗を減らしているそうです。
正直なところまだまだ船舶は勉強中なのでどういった点がスゴイのかはよくわからないのですが、それでも独特な船だなという印象は持ちます。

また船を逃しては一大事なので慌ててターミナルに戻ります。2階に上がって乗船口へ。

けっこう距離ありますね…
錨が内側にあるって珍しいですよね。
船体にもSSTH70の文字が。

船内には重厚な座席が並びます。

前方には+400円で利用できるスペシャルシートが。平日はソフトドリンクが無料になることもあってか数組座っていましたが、わずか30分間という乗船時間を考えるとあまりメリットはないように思います。ゆったりくつろぎたい方はむしろ2階席に上がった方がいいでしょう。

なんと2階はソファー中心のラウンジスタイルになっているのです。特にグループで乗るならこちらでしょう。ちなみに乗船してすぐはこんな感じでガラガラでしたが、少し目を離している隙に観光バスの団体が占拠してしまったので席取りはお早めに…。

仕方がないので後部のデッキに出てみました。カモメが飛んできては乗客に絡んできます。

素敵なファンネル?です。
売店脇のカウンターでおやつをいただきます。

まもなく到着しますとアナウンスが入ったのでデッキに出てみると、ちょうど先ほど見送った“レインボーかもめ”とすれ違いました。
余談ですが、こちらが熊本~島原間30分なのに対し、あちらの九商フェリーは所要60分。当初乗る予定だった便の10分前には九商フェリーの便も設定されていたのですが、まさか海上でフェリーがフェリーを追い越すなんて光景が見られたのでしょうか。乗り遅れてしまったのがつくづく惜しいです。

ぐるっと向きを変えて接岸。いつのまにか10分ほど遅れていました。


30分という乗船時間はこの船を満喫しきるにはちょっと物足りません。もともと熊本~島原を30分で結ぶことを目的に投入された船なのでそうはいっても仕方ない…と思っていたら、なんと乗りっぱなしで往復するプランがありました。片道運賃+400円でしかもワンドリンク付き、スペシャルシートにも乗れ得るということで、これはおトクすぎます。単純に船に乗るだけが目的であるならこれ以上のものはないでしょう。

ともかく絢爛でくつろげる船ですので島原を訪れる際は是非乗ってみてください。

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