おそらく都心から最も近いところを走っている観光列車であろう”西武 旅するレストラン 52席の至福”。”至福”の名に偽りがないか確かめてきました。
※筆者は舌に自信がありませんので、車内で提供される料理については基本的に簡単な紹介のみに留めます。味が気になるという方は是非実際にご乗車ください。
やってきたのは小江戸川越。もともとは秩父への観光列車ですが、時期によっては別のところを発着することもあるらしく(今や池袋駅→池袋駅のコースもあるみたいですね)、今回乗車するのは本川越駅→西武新宿駅のコースです。
電光掲示板には臨時として表示されます。
発車すると順次ウェルカムシャンパンが運ばれてきます。お酒が飲めない方はぶどうジュースの提供になりますが、これが非常に濃厚で甘ったるいので、炭酸で割ってもらうといいかと思います。
オードブルが運ばれてきました。器もお洒落です。
何かと思ったらスッポンだそう。一品目からびっくりです。
続いて蟹のシャルロットにホタテと天使の海老のボイル。味付けがトムヤムクン風なのはともかくとして、海老のどのあたりが天使なんだろ…。
ところで気づけば列車はもう東村山。秩父〜池袋でさえゆっくり走って3時間というのにこんなペースで進んで食事時間を確保できるのでしょうか…?
と、小平駅を過ぎたところで列車は急に停まりました。もしやこれは…?
なんと列車は小平駅新宿方の引き上げ線に入線していました。拝島線の折り返し列車が利用するくらいで、当然ながら通常は訪れることのできない場所。めったにない経験にひとり心躍ります。
反対側はどうなっているのだろうと見に行ってみると、通常は閉ざされている1号車奥の扉が開放されており、引き上げ線末端部を見ることができました。趣味人への配慮なのかもしれません。
車端部に改造前の座席が残されているのを見つけました。普段は人目につかないため残しても問題ないと判断されたのでしょうか。
席に戻ってくるとコロッケが提供されていました。
ふわふわゆえに潰れてしまいましたが、中身はこんな感じ。アワビとアイスバインとのこと。
引き上げ線で食べるご飯というのもまたオツです。
たっぷり停車したのち折り返して拝島線に入っていきます。
萩山からはさらに多摩湖線へ。運行距離が短いだけに複雑な経路で時間稼ぎをするようです。
こんどはゴボウのポタージュ。
下のお皿に突起をつけて上の器がズレないようにするというあたりがなんとも列車内で提供される料理らしいです。
ポタージュを食べ終わったところで終点の西武遊園地駅に着きました。所要時間を稼ぐためか園内に入ってイルミネーションを楽しめるとのこと。途中駅での長時間停車は秩父へのブランチコースでも実施していますが、ディナーコースでもこの手を使うとは驚きです。
入園券代わりに52席の至福のロゴ入りカードとケースが配られました。これを持っていればアトラクションにも一回乗れるそうです。
入園ゲートまでもが装飾されていました。入る前から圧倒されます。
イルミネーションを楽しむならやはり高いところから、ということで観覧車へ。
地平線際にうっすらと光が残っているのがなんともまた幻想的です。
俯瞰してみるとまた違って見えてくるものですね。
ピンボケしてしまっていますが、ダム湖の堤上にも電飾が施されているのがわかります。
頂上近くまで上ってきて日も完全に姿を隠してきたので一層ライトアップが目に焼きつくのですが、高い位置に来たことで風が強くなってきました。もとより高いところは得意ではないので万が一にでも落ちないかヒヤヒヤです。早く降りたい…。
てっぺんまでやってきました。風が吹き抜けて怖いわ寒いわ。はよ下りろ…。
遊覧汽車もライトアップされています。鉄道趣味人としてちょっと乗ってみたかったですね。
二つの意味で冷やされながらも無事一周できました。
園内を全然回れていませんが、観覧車で体が冷え切ってしまったので列車に戻ることにします。
外歩きで体が冷えてしまったら温かいものを、ということでメインディッシュは黒薩摩鶏のバーベキューソース。
甘辛系の味付けもあって何杯でもご飯が食べられそうです。(ご飯の提供などはありませんでしたが…)
何度目かの一般列車が到着するのと入れ違いで発車します。
ここから先は真っ直ぐに新宿を目指すのか、デザートのフォンダンショコラが運ばれてきました。
とろり。
温かいチョコレートと冷たいアイスというなんとも絶妙な組み合わせです。
小平から新宿線に戻ってひた走っているとサックスを持ったコンビが現れました。音大(具体的な校名忘れました…)の学生さんだそうで、日替わりで2名ずつ乗車し生演奏をしているとのこと。ゆえにどの楽器が当たるかはその日のお楽しみなのだそうです。
サックスが比較的新しい楽器ということもあって選曲は最近のものが多め。特に島唄が流れ出した時には驚きました。途中三線のような音が聞こえてきたと思ったらなんとサックスの奏法の一つで三線のような音を出すものがあるのだそう。こういった馴染みのある楽器の新たな一面(あるいは聞いたこともないような楽器の特徴)を知ることができるのは、生演奏ならではかもしれません。
モダンでどことなくゆったりとした時間は過ぎ、定刻通りに列車は西武新宿駅に到着しました。帰り道のことを考えると高田馬場で降ろしてもらったほうが都合がいいのですが(千葉方面に帰るのでなおさらです)、後ろから一般列車が迫り来るなか待避線のない駅で悠長に客扱いなどしているわけにもいかないのでしょう。降車時にはレッドカーペットを敷いてくれますから、かかる時間は一般列車の比ではありません。もともと西武線の一日乗車券が同封されていますので素直にひと駅一般電車に揺られることにしました。
一日乗車券が付いてくる上に運行ダイヤも私たちを楽しませてくれる”西武 旅するレストラン 52席の至福”。ブランチコース1万円、ディナーコース1万5000円と比較的お手頃な値段ですし、一度ご乗車してみてはいかがでしょうか。
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