失われた県道の記憶

前回はこの写真の地点で終わりました。
手元の地形図によれば、線路は背後から県道に沿うような形で進むように見えます。現実の景色に照らし合わせれば今目の前に見えている道ということになるのですが、この道はどうも曲がり過ぎな気がします。先ほどのカーブに似合っていないような気がするのです。もっと真っ直ぐというか、ちょうど道路左手の住宅街を突っ切っていくような感じ。

と、同行の蝉氏と三島氏がスマホを見ながら何やら言い合っています。耳を傾けてみると、スシローの所を突っ切っていたのではないかとのこと。当然ながら地形図にスシローの記載はありませんからどこのことかと思っているとさらに衝撃の一言。「法務局から先の道は合っているだろうけど、その手前がな…」
たしかに地形図に示されている県道は法務局のそばを通っていますが、その手前が分からないとはどういうことでしょう?県道が一本真っ直ぐ通っていてそれで終わりではないのでしょうか? 

ふと手元の地形図に目を落としてみると何か変です。県道は総武線を越える陸橋のところで分断されているのです。陸橋の下を潜るのかと思いましたが、交差地点は陸橋が始まる手前であり、なにより県道は他の道路に接続せずブツ切りになっています。 

何やら嫌な予感がしてきましたが、ひとまず陸橋のところまで向かいます。道中の住宅街は町割りがやや独特な気がしましたが、それ以外はいたって普通の新興住宅街でした。

そんなわけで陸橋のところまで着いたのですが、県道はどこにもありません。地方によくあるようなロードサイドが延々とあるだけで、交差する道路はいずれも小規模なものばかりです。これは、再開発によって県道が失われたとみて間違いないでしょう。衝撃的すぎて写真を撮ることすら忘れてしまいました。

失意のまま脇道を進んでいくと、法務局の前に着きました。

よく見ると、水路を渡る橋のところからオレンジのセンターラインが描かれています。失われた県道が再び現れたのでしょう。振り返ってみるとそれが良くわかりました。

歪な十字路から先、オレンジのセンターラインが現れることはありません。再開発で道路が変更されることは良くありますが、街に飲み込まれた県道というのは初めて見ました。区画整理された街を生み出すには仕方のないことだったのでしょうが、それにしてもかなりの衝撃です。

県道は少し行ったところで左折していました。住宅街に大部分を飲み込まれたことで、残された区間はヒゲのようになってしまいましたが、それはそれで趣があるような。

後日、モノサクの旧線について調べていくと、この失われた区間が千葉県道136号線佐倉停車場千代田線の旧道であることが判明しました。どうやら寺崎特定土地区画整理事業によって県道の経路変更が行われたようです。事業がほぼ完了し、住宅の分譲が開始されたのが平成27(2015)年のことですので、現地で感じた新しい街、というのは当たっていたと言えます。ただし、事業自体は平成11(1999)年から始まっていたようで、軌道跡らしさがいつまで残されてたのかは不明です。
それゆえか、廃線探索のサイトを回ってみてもこの区間についての写真はほとんどなく、強いて言えばこちらのサイトに比較的多くの写真が残されているくらいでした。私もこういった地味そうな区間は飛ばしてしまいそうですが、地味な景色にこそ大きく変貌してしまう危険性があることを実感します。

残されたヒゲ支線については区画整理の計画もないのでこれからもしばらく残るものと思われますが、ある日突然県道指定を解除される日が来るかもしれません。旧道の存在を思い出させてくれる生き証人として末永く存在してくれることを望みます。 

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