長崎新幹線の在り方とは

白いかもめに乗車して、在来線特急高速化の最大のネックは諫早〜肥前鹿島(〜肥前山口)であることを再確認しました。こうなると、長崎新幹線反対派の主張として散見される肥前山口〜諫早の複線化案は極めて現実的でない、と言えます。諫早〜肥前鹿島は複線化用地を確保するのが困難ですし、そもそも複線化したところで高速化が望めませんから。(長崎で乗車したタクシーの運転手が「長崎新幹線は在来線の複線化で十分だ」と言っていたのが非常に残念です。私が長崎新幹線について否定的な話をしたのが原因だとは思いますが…。)
ただ、現在の武雄温泉乗り継ぎ案に不満がないとは決して言えません。それは、以下の理由があるからです。

<1>短距離にもかかわらず乗り換えが必要である

 博多~長崎は在来線でも150キロほどしかなく特急で2時間ほどの距離です。にもかかわらず、現計画では対面とはいえ武雄温泉での乗り換えを必要としており、利便性低下が懸念されます。

<2>所要時間の短縮があまり望めない

 現計画では博多~長崎は最速1時間26分となっており、在来線特急と比べてわずか22分の短縮にとどまる見込みです。これで乗り換えが必要なのですから、乗客の負担はむしろ増えてしまうのではないでしょうか。

<3>長崎駅の移転について

 諫早~長崎の建設に合わせて長崎駅はやや海側へ移転することが決定しています。それ自体は問題でもなんでもないのですが、問題となるのが駅前の路面電車。当初は駅移転に合わせて駅に乗り入れる計画でしたが、長崎電気軌道側がこれを取りやめ、現在の位置のままとすることを決定。乗り換え距離が延びることは必至です(まあ今でも歩道橋を渡らないといけないのでアクセスが良いとは言えないのですが…)。

では、どうすれば良いのか。私の案は以下になります。

<基本方針>

現在計画されている長崎新幹線は暫定の形である。暫定の形ならば暫定らしい在り方が存在するはずである。すなわち、将来的な高速化を見据えつつ、長崎本線の完全複線化を実現し、直通の利便性を損なわないことが求められる。

<1>鳥栖〜肥前山口

全線で複線化されており、高速運転も可能なためほとんど手を加える必要はないでしょう。強いて言うならば、乗り心地改善と将来的なFGT乗り入れを見据えた軌道強化が必要でしょうか。

<2>肥前山口〜武雄温泉

そこまで規格が高くなく、複線化もなされていないため、複線化とそれに伴う軌道改良が必要になります。これは、佐世保・ハウステンボス方面の特急についてもメリットがあるので是非とも実施すべきでしょう。

<3>武雄温泉〜諫早

もともと整備区間だったこともあって、かなりの区間で工事が終了していますので、この設備を存分に生かすこととしましょう。

↑建設中の軌道は並行する大村線から眺めることができます。上から2枚目の写真など、今にも列車が走ってきそうです。

ただし、軌道は標準軌ではなく狭軌とします。これは、在来線特急が当区間以降に直接乗り入れできるようにするためです。新幹線路盤に在来線を通すことは青函トンネルでも行われていますし、北陸新幹線石動〜金沢でも新幹線路盤を先行整備してサンダーバードを通す計画がなされていました(北陸新幹線の建設が進んだため中止されました)。在来線の高速化&複線化を実現し、将来的には新幹線を通すことも可能という、長崎新幹線にベストな路盤の使用方法だと思います。

<4>諫早〜長崎

現在、工事真っ最中の区間ですが、できればこの区間については建設を止めた方が良いと考えています。というのも、この区間に関しては市布経由の新線のおかげで高速運転がなされているからです。また、在来線を活用すれば長崎市街北の拠点となっており、原爆関連施設にも近い浦上駅を経由することができるというのもかなり魅力的です。
ただ、市布経由の新線は単線ですので、複線化が求められます。諫早〜喜々津、浦上〜長崎は複線化されているので工事が必要なのは喜々津〜浦上の16.8キロのみですが、この区間はトンネルが多く複線化が可能なのかについては少々疑問が残ります。現在建設中のルートでは浦上駅を経由できませんし、長崎駅での路面電車乗り換えも長くなってしまうので在来線ベースで建設できたら良いのですが…。

このように、平成34年度開業時点では全線狭軌で建設することが望ましいと考えています。したがって、使用車両は885系、あるいはその後継車両で十分です。最高時速も新線区間では160キロを目指して欲しいですが、安定運行と完全毎時2本化を実現するだけであれば130キロでも問題ありません。急カーブによる速度制限が撤廃されるだけでもかなりの高速化が期待できるでしょう。
なお、主たる区間が200キロ以上で走行していなければ新幹線と言えないようですが、長崎新幹線の正式名称が九州新幹線西九州ルートであることを生かして九州新幹線の主たる区間である博多〜鹿児島は200キロ以上で走行している、と言って誤魔化せばいいかと思います(笑)あるいは、北陸新幹線石動〜金沢のように、将来フル規格新幹線が走るところに在来線を乗り入れさせている、と言うこともできます。フル規格新幹線が走るのはいつの日か知ったこっちゃありませんが…。
また、新鳥栖〜武雄温泉の建設が決まったならば武雄温泉〜諫早を標準軌に敷き直し、全線フル規格で建設しても良いでしょう。もっとも、個人的には在来線特急の高速化(すなわち上で示した暫定案です)で十分だと思いますが…。

武雄温泉〜長崎のみフル規格の建設に止めていたのはFGTという前提があったから。しかし、FGTの導入が困難になってきている現在、武雄温泉〜長崎をフル規格で建設する必要はどこにもありません。むしろ、乗り換えが増えて利便性が低下するだけです。それでも武雄温泉〜長崎にフル規格新幹線を通そうとするのは、長崎新幹線を不便にし、佐賀県に新鳥栖〜武雄温泉の建設を認めさせるためではないかと勘ぐってしまいます。長崎県(と嬉野市)の思惑のせいで利用者が不便を強いられることがあってはなりません。公共交通がつねに利用者の幸福を追求するものであってほしいと強く願います。

コメント

  1. 空想委員 より:

    西九州新幹線に問題が多いのはその通りなのですが、私としてはもう少し建設的に物事を見れないものかとTwitterの議論などを見ていて思うところです。乗り換えが増えるのが問題などというのは、はっきり言って小学生でもわかることですから。

    私としては、武雄温泉~長崎フル規格化で良かったのではないかと思っているのが「武雄温泉駅での在来線とのホームタッチ乗り換え」が約束されたこと。これを生かして、将来の新鳥栖~武雄温泉フル規格化新幹線開業の暁には「みどり」「ハウステンボス」とのホームタッチ乗り換えができないものだろうか、と思っています。そして「みどり」「ハウステンボス」は博多~武雄温泉含め在来線で残せば、二日市等の救済にもなりますから。

    (なおこれを書いている時点で、私は武雄温泉駅の構造を詳しく知りません。もしホームタッチ乗り換えが恒久的な施設でなかったり、佐世保方面との直通ができない構造だったり、さらにはホームタッチ乗り換えが私の記憶違いだった場合は大変申し訳ございません)

    • ばか者 より:

      コメントありがとうございます。

      全線フル規格になった際の武雄温泉対面乗り換えは想像もしていませんでした。いちおう、こちらに武雄温泉の構造が載っており、それによれば対面乗り換えは恒久的なもののようですね。(ただ、繁忙期はともかく通常は新幹線⇄普通列車の乗り換えにとどまるような気もしますが…)
      https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2016/03/1457599873.pdf

      私としては、将来のフル規格化には反対しませんが暫定開業時のやり方にはもっといいものがあるのではないかと考えているのでその辺りを今後の記事で示していければ、と思う次第です。

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